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X'mas の

 2012 クリスマス童話企画♪

クリスマスがくるよ^^。準備は楽しんで進めてるかな?

クリスマスには奇跡がおこる。
奇跡はまるで追い風のように、君を空高く舞いあげてくれるはず。


感じとろう、わがままに。
好きや嫌いは心の羅針盤。
好きと感じる方向には、喜び楽しみ学ぶことがたくさん溢れている。
嫌いと感じる方向には、苦しみ悲しみ学ぶことが山ほど待ち受けている。





背中押す強い風の中で、戸惑いながら歩を進め
沸き上がる喜びの渦に、善悪をすっかり忘れた人がいた。

好き嫌いが麻痺していたんじゃないだろうか。。。

普段なら嫌う行いも、周りの雰囲気に呑まれ流されて
周りも似たような無責任さで、欲をどんどん膨らませて
ふと見たら、その人はもう後戻りできないところで
悲鳴をあげて泣き叫んでいた。



自分に向けられる言葉の中から
自分にとって必要なものを
選ぶことを諦めてしまっていたみたい

好きの先にある、大切なものへと手を伸ばしつつも
湧き上がる不安や迷い
それらを分かち合いながらも背中押してくれる仲間を
得られなかったみたい

悲しみと悔しさと後悔の渦が
しばらくの間はつきまとうだろうな
そこから再び前を見て
歩み始めるその日がくるまで




クリスマスがくるよ^^。準備は楽しく進めてるかな?

クリスマスには奇跡がおこる。
奇跡はまるで追い風のように、君を空高く舞いあげてくれるはず。



向かい風の中で、歯を食いしばりながら
けれど決してそれを見せず
つくり笑顔で歩みながら、善悪をすっかり考えなくなった人がいた

何が善であり、何が悪なんだ?
そんな問いかけをするよりもまず
こぼれ落ちないように突き出た岩に指をかけ
必死に這い上がるように生きていた人だった。

好き嫌いは感じとる暇もなかったようだ。

それでも好きな人といるときはいつも笑顔でいて
悲しい思いも辛い思いも
染み出るものは隠せないとわかっていても
笑顔でいたいと願い歩む人だったらしい。

余裕のない状況の中にも楽しみをみつけ
堅苦しい頑固さも少しは余裕ができたらしい。



人に向ける優しさに時折混じるお茶目な気配
浮かべる笑顔に癒されるように
人が集まり輪が広がっている

仕草がとても可愛くて
言葉がとても優しさに満ち
声に光が感じられる



感じとろう、わがままに。
好きや嫌いは心の羅針盤。
好きと感じる方向には、喜び楽しみ学ぶことがたくさん溢れている。
嫌いと感じる方向には、苦しみ悲しみ学ぶことが山ほど待ち受けている。



選ぶのは自分自身
タイミングはほんの一瞬
選び損ねたら次が来るまで
また準備を重ねなきゃ
次の機会まで



クリスマスがくるよ^^。準備は楽しんで進めてるかな?

クリスマスには奇跡がおこる。
奇跡はまるで追い風のように、君を空高く舞いあげてくれるはず。



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# by MemenCrital | 2012-12-23 16:16 | 童語り:みんなのどうわ 

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日記

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# by MemenCrital | 2012-06-01 06:00 

OASIS -クリスマス童話- 17

 それから後、この砂漠の国は若い王を君主にいだき、大層栄えることになったと物の語りは伝えています。南東のオアシスにある泉には、太古の昔に他の地より移り住んだ女神が住むと伝わり、事実、深夜にそのオアシスを訪れると、女神の機嫌が良い時には泉が光り輝く日があるのです。王の計らいで国とオアシスを繋ぐ街道にはいくつもの明かりが設けられ、そのライトアップされた道を大切な人と歩むと、幸せになるという噂が流れつづけています。旅人達はオアシスに立ち寄るとこの国の名産であるステンドグラスと塩を買い求めていきます。
 
 大層美しい姫が三人おり、オアシスにて時折ガイドを務めています。王は彼女らの兄として気が気ではないと時折ぼやいておりますが、屈強なガードマンを絶えず身辺に置くことを約束させることで妹達を自由にさせているようです。
 
 前王は時折旅先から消息を城へと連絡するようになりました。国が栄えて旅先でも耳にすることが多くなったのでしょう。ピレネーを越える商隊に参加していると連絡がありました。
 
 さて、女王はといえば…
 退位して後、劇場にて踊り子の手ほどきを受けながら、少しづつ踊りを覚え始めたとのことです。重臣たちが劇場へと足を運び、今はまだ彼らの前でだけその踊りを披露しているとのことですがどのような様子でしょうか。
 
 砂に囲まれた砂漠にある国で、出会いの奇跡が時を重ねて、少しづつ雪山の氷が溶け出すかのように馴染んでいった物語。あまりにもその変化がゆっくり過ぎて誰にも奇跡とは思えなかったでしょうが、おそらくこれが世の中に当たり前にある奇跡のひとつだと思えて仕方がありません。
 
 あなたの元にもいつかこのような奇跡が訪れますように。



Fin.






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# by MemenCrital | 2011-12-25 00:56 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 16

 「それではいつもお城で見る踊りと変わりありません。私にはそれで十分ですが、彼らにはそれでは理解できないようなのです。」
 
 商家はその言葉を聞き、やれやれと小首を傾げました。
 「まったく、お考えが深すぎて私めには何のことやら。」
 
 「あら、私はあなたよりも彼らとの付き合いが長いですからね。ここへ足を運べば、彼らにも理解できると信じてやってきましたのよ。思ったとおり後を追ってきましたし、きっとわかってもらえると思いますわ。」
 
 「…あれ?こちらの思惑も見透かされていますか?」
 
 「当たり前でしょう。私を誰だと思ってますの?これでも一国の女王でありますわよ。」
 
 「これはこれは陛下、失礼をいたしました。」
 
 「また心にもないことを。それでも、あなたの計らいには感謝いたします。私の頑なな頭をほぐしてくれるキッカケをありがとう。」
 
 「滅相もありません。陛下におかれましては昔より実に聡明で、お心にご自由さを持ったお方と心得ております。」
 
 「ありがとう。長いこと忘れてしまっていました。彼女を引きあわせてくれたことに感謝いたします。」
 
 「身に余る光栄でございます。」
 
 やがて劇場内が拍手でつつまれると、女王と重臣たちはお城へと戻りました。





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# by MemenCrital | 2011-12-25 00:55 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 15

 翌日になると女王は以前から思っていたことを実行にうつしはじめました。王子を呼び、内政に関るよう指示を出し、信頼の置ける臣下の下につけたのです。
 また、他にも信頼のおける臣下を呼び寄せ、今まで自分が決定権を担っていたことを任せるように采配しました。
 
 驚きつつもこれまでの女王の采配を見てきた王子や臣下達は、自分ならできると女王が認めてくれたと思い、張り切って働き始めました。するとこれまで滞りを見せていた様々な申し出が、あっという間に片付いていくのです。
 
 女王はほんの少し気持ちが安らぎました。
 
 それから暫くして、いくつかの苦情が女王の元に舞い込むようになりました。決定が早くなったのはいいが、手抜かりが多すぎるというものがほとんどでした。これならばまだ前のほうがいいと、何人かの重臣は口を揃えて言います。
 
 女王は少し考えると、城を出て踊り子のいる劇場へと足を運びました。苦情を受けてまた深く考え込んでしまったからです。もう一度自由な心を取り戻さなければ、と思い立って自ら劇場へと足を運んでいきました。
 
 劇場で見る踊り子の踊りは、城内の時よりも更に軽やかで、心がウキウキと沸き立つような思いに駆られました。
 「いかがなされたのですか女王様、このようなところへと御自ら足を運ばれて?」
 劇場支配人でもある商家が女王の来場を聞きつけ、そそくさと足を運んできました。
 
 「頭の硬い重臣どもがいましてね、彼らにもう少し考え方をやわらげていただこうと足を運んだわけです。」
 言われて劇場の入り口へと目を向けると、そこには何名かのお城の重臣たちが揃ってやってきていました。
 
 「あらかじめおっしゃっていただければ席をご用意しましたのに。」






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# by MemenCrital | 2011-12-25 00:36 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 14

 「気楽に?」
 女王はオウム返しに踊り子に尋ねました。
 
 「はい、そこまで深くお考えいただくようなものではございません。見て楽しく、また叶いますなら踊って楽しく、音を楽しみ踊りを楽しみ、歓喜を呼び起こすものが踊りにてございます。国政を傾けるような大層なものではございません。せいぜいお心を一時、開放し自由さを取り戻していただくためのものでございます。」
 
 その言葉に女王は感銘を受けた気がしました。踊りを見て自分の心が自由さを取り戻していたのだと理解したのです。
 
 「ありがとう。あなたに逢えてとても嬉しく思います。ずっと求めていたものがどんなものなのか、これまでわからないまま憧れていました。それをあなたは、目の前で私の心に理解させてくれたのです。」
 
 女王の言葉に踊り子は照れた笑いを浮かべ答えました。
 「そんなこと、私こそ感謝してます。女王様に逢えて、認めてもらえて、劇場まで手に入れることができました。これ以上いらないって叫びたくなるくらい、何もかもが一度に手に入って、だからそのお礼にお城へと来るようにしたんです。」
 
 女王は優しく微笑むと、踊り子の頭をそっと撫でました。少し驚いたあと、踊り子はまるで子供のように涙を浮かべこう言いました。
 「今までずっとひとりだったんです。だから嬉しくて。」
 
 女王はそのまま優しく踊り子を抱きしめると、踊り子は今までの強がりがどこへいったのかと思うくらいに泣き出しました。
 
 「辛かったわね。もう大丈夫よ。」
 女王の顔に母親の表情がわきあがっていました。





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# by MemenCrital | 2011-12-25 00:06 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 13

 踊り子は何を聞かれたのかわからないといった表情で、言葉に詰まりました。
 
 「踊るということは素晴らしいことだと思いますわ。けれどいつまでも踊り続けていられるものではないでしょう。その先にどんな夢を見ているか、それを私は知りたいと思うし、そのためにできることがあれば応援したいと考えています。」
 
 女王は、踊り子がやがて踊りを卒業したとき、例えば踊りの手ほどきを生徒を集めて行うだとか、あるいは踊りの研究を文書にまとめるなどの夢があるのではないかと考えていたのです。
 
 それを理解した踊り子は、少し戸惑いつつもこう答えました。
 「そんな先のことは今は考えておりません。今はただ踊ることのみが私の幸福。ただ踊れるだけの今の生活を夢に見てこの地でやっと手に入れたのです。これまでは、ただ踊るためだけにどれだけのものを差し出さねばいられなかったか。その日々を思えば、今はこれ以上を求めたいとは思いません。」
 
 先ほどの警戒心といい、今のこの言葉といい、いったいどれだけの苦労をこの子はしてきたのだろう、と女王は思いました。これだけの才能があり、のびのびと自由に踊る時の様子からは想像できぬほどの、辛さや苦しさをこの身に受けてきたのだろうかと。
 
 「申し訳ないことを言ってしまったわね。ごめんなさい。」
 
 再び踊り子は言葉に詰まりました。たったあれだけの言葉でこの人は私の今までの苦労をわかってくれたのかと、感じ取りました。
 
 女王は続けて踊り子に言いました。
 「あなたがどのような境遇でここまできたのかを、今私が全て理解することはできないと思います。けれど、あなたにそのような苦労を負わせる側にいることを理解しています。ごめんなさいね。ううん、謝ってもどうしようもないのだけど。踊りたいと願う純粋な心を、生かしきれる国政を担える国主になれるかと問われたら答えに詰まります。幼児が餓えてしまわぬようにと考えて国をつくるだけで精一杯ですもの。それだけじゃ、人は幸せにはなれないのだと頭ではわかっていても、どうしてもそこを優先してしまうしかない自分の能力の足りなさが悔しく思います。」
 
 そう言って頭を下げる女王に踊り子は驚いて答えました。
 「めっそうもありません。そのような。そのように頭を下げられたら私もどうしたらいいかわからなくなってしまいます。どうか頭をお上げください。そしてたかが踊りと、もっと気楽にお考えください。」





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# by MemenCrital | 2011-12-25 00:05 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 12

 女王はその夜夢を見ました。商家がやがていくつかの取り引きを担うようになり、彼の友人らもそれに感銘をうけ、仲間だって更に発展させていくのです。女王の子らもそれを見て習い、国政に興味を持って自発的に学び始めていきます。肩にのった荷がいくつか降りて、女王は自分の自由な時間を手に入れる日が近いと夢の中で思いました。
 
 それから暫くは、あまり大きな変化はありませんでした。女王は今までどおり冷静に確実な采配を振るい、商家は取り引きのために隣国を飛び回り、踊り子は劇場で踊り続けていました。街は次第に活気付き、いくつかの新しい産業が生まれました。砂漠の砂からガラスの粒を取り出し、それを炉で溶かしステンドグラスにする技術が生まれました。海水を運河で国の近くまで引き、そこに塩田ができました。オアシスを訪れる各国の旅行客がお土産にとそのステンドグラスや塩を買い求めるようになり、国外からの注文も少しづつ増えていきました。
 
 女王はこれらの中心に商家がいると考え、心強く思いました。そうして自分も負けまいと精一杯に頑張り、いくつか新しい国との取り引きもまとまっていきました。
 
 そんな折、またも踊り子が登城を求め願い出てきました。一生懸命だったため少々疲れも出はじめていましたので、女王はその申し出を快諾しました。
 
 今度の踊りは実に優雅で、爪先立てて宙を飛び軽やかに舞う。そんな軽快さが女王の心を優しく労わっていきました。演奏する者たちも少女ふたりだけではなく、異国のスーツを身にまとった凛とした青年らが弦楽器を奏で、それはそれは心地よい不思議で幻想的な世界を表現していました。
 
 その日は、女王は踊り子に懇願し暫くの間だけ城内に留まるよう申し出ました。踊り子は少し緊張した警戒心を見せた後、仕方ないといった様子でその申し出を承諾しました。
 
 その様子が気になり、女王は暫く踊り子を城内の散策に案内しました。何か不安があればすぐに城外へと出られる道も教え、ただ話がしたいだけなのだということを理解してもらえるように努めました。
 
 緊張の解けた踊り子は、その日は遅くまで女王と語り合いました。自分の出自、故郷のこと、踊りを覚えるためにしてきたこと、訪れた街や村の数々。どの話も女王には新鮮で、きらめいて思えました。
 
 「あなたは何のために踊りつづけるの?その先に思い描く夢や希望を私は知りたいわ。」
 女王は踊り子にそう尋ねました。





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# by MemenCrital | 2011-12-25 00:03 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 11

 商家が再び登城を願い出たのは、最後にお城に来てから半年が過ぎた頃でした。女王の前に進み出た商家は以前とは変わってスッキリとした体型となり頬が痩せこけていました。
 
 「何事かありましたか?ずいぶんとやつれたように見えますけれど」
 
 「大したことはありません。ほんの暫く隣国へと赴いていました。」
 
 「あらあら、それは大変でしたね。」
 
 「女王様!是非ともお願いがございます。以前申し出てお断りされた件を蒸し返すようで誠に申し訳ございませんが、此度は隣国にても女王様と同じように考える王にも相談して参りました。その上で申し上げます。私の誠の心をご理解いただくために是非とも隣国との貿易を一手にお引き受けさせてください。出ました利益は全て国へと還元させていただきます。必要な経費分をいただけましたらそれで十分でございます。どうか是非ともご検討いただけますようお願い申し上げます。」
 
 女王は暫く考え込み、そうしてゆっくりと答えました。
 
 「何を見聞きして何を相談してきたのかは知りませんが、その様子をみると大層ご苦労なさっておいでの様子。いいでしょう、思うとおりにして御覧なさい。そして利益に関しては折半でかまいません。国内の産業が対外的にも競い合えるようになりましたら、更に利益をその方へと還元いたします。」
 
 商家は、感動してその場で膝をつき涙を流しはじめました。
 
 「おやおや、どうしました?」
 
 「嬉しくて泣いているのです。これでようやく、あの日夢に見たスタート地点に立つことができました。これが泣かずにいられましょうか?」
 
 「おやおや、やはりあなたはずいぶんと思い込みが激しいようなのですね。まるで青年のようですわ。」
 
 女王はそう言うとコロコロと笑い出しました。その笑い方があまりにもかわいらしかったため、商家もつられて笑い出してしまいました。
 
 「あらあら、まるでカラスのごとくですわね。」
 
 「さようでございますか。しかしつられてしまう気持ちばっかりはどうしようもありません。」
 
 こうして、この国の何かが変わりだすキッカケが生まれていきました。




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# by MemenCrital | 2011-12-25 00:03 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 10

 「ゆったりとした動きの中に、激しさと静けさが同居していますね。このような踊りが世界にあるのですか。その方はそこへと訪れてそれを直に目にしてきたのですか?羨ましい限りです。」
 
 かけられた言葉に踊り子は少し動じて言葉を返しました。
 「畏れながら陛下様。陛下様ならばそうと願えば、いつでもかの国を訪問しかような踊りもその目にてご覧いただけることが叶うと思われます。どうぞ羨ましいなどとはおっしゃりませぬようお願い申し上げます。」
 
 「そういう意味で言ったのではありません。そう怯えなくともよいでしょう。ただ、私もこのような立場でなかったら、皆と連れ立ってかような地へと赴いたかもしれませんね。それが羨ましくてつい口に出てしまっただけのこと。お忘れなさい。」
 
 踊り子は返す言葉もありませんでした。
 
 こうしてまた日々が変わりなく過ぎていくようになり、女王は相変わらず自らの役目に誠実でいて、王子や王女は相変わらず自分のことに手一杯で、臣下達は女王の言葉に奔走し、国は何事も無く順調に過ぎていきました。
 商家は商いを今までどおり続け、踊り子の劇場には人があふれていました。
 
 日々の中で、女王は今までよりも更に国政に向けて精力を注ぎ込んでいきました。商家や踊り子の存在に勇気づけられたのです。これまで自分だけがひとり頑張ってきたような気持ちでいたのが、同じように国を想い自分に意見してくる存在に力づけられました。自分の知らない世界のことを知り、それを自分にはできない踊りという表現で伝えられる、その存在を愛しいと思いました。
 
 やがて数ヶ月が過ぎました。
 
 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 





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# by MemenCrital | 2011-12-24 23:01 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 9

 商家は更に言いました。
 
 「今のままでは女王様、あなた様がいなくなった途端にこの国は瓦解するかもしれません。それでは願いとは違った国になってしまうのではないでしょうか?」
 この言葉は女王の胸にグサリと突き刺さりました。
 
 もともと頭のよさに秀でた女王です。自分の心配性からくる過保護が国や家族にどのような影響を及ぼすか考えたことがなかったわけではありません。護られすぎてしまえば人は怠惰になる。その言葉は先王から何度も聞かされてきた言葉です。しかし、と女王は考えました。
 
 「しかし、私にはまだその準備が無い。お前の言うように諸外国との交渉を国民に委ねるようにすることで、何がおこるのかを考えると空恐ろしい。」
 女王は嘘偽りなく商家に対して思いを口にしました。
 
 「そうですか。おっしゃることもわかります。未だ国外へと出向く話をすると、他の商人たちは腰が引けてしまうものが多くあります。では、女王様の準備が整うまで私めは私めの役割を全うするとしましょう。」
 そう言うと商家は城を後にしました。
 
 女王はどうしたらいいかと悩みながら、その夜は過ぎていきました。
 
 翌日になると今度は、例の踊り子が自らお目通りを願い出て、また城の中で今度は少し違った踊りを披露しました。
 
 前回の一日を踊るテンポの良いものではなく、今回は四季をテーマに、この国ではない東の果ての国にて習い覚えたという優雅で美しい所作の踊りに、またも女王は心を癒された気がしました。
 





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# by MemenCrital | 2011-12-24 20:58 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 8

 「ずいぶんと思い込みの激しい男の子だったのですね。」
 笑顔が先ほどまでの警戒心を吹き飛ばしたかのように輝いていました。
 
 「ありがとうございます。」
 商家はそう答えました。
 
 「おやおや、何を言ってもありがとうなんですね。」
 女王は更に笑います。
 
 「他に返す言葉を知らないもので。ありがとうございます。」
 商家は少し照れてそう答えました。
 
 そうしてひとしきり、お互いに笑いあって、その後商家が話し始めました。
 
 「女王様、実は折り入って話がございます。今のこの国の産業についてですが…」
 
 商家の話は簡潔でした。国外との取り引きを行う際この国では、女王が自ら判を押して物のやりとりを行っていたのです。それはひとえに女王の国を護りたいという願いから発した決まりごとであり、そのおかげで国内の産業は苦しい思いをせず、のびのびと独自の生産物を作り出していたのです。
 
 しかし商家の言うには、そのせいで伸び悩んでいる生産者がいる、とのことでした。多くはその庇護のおかげでのびのびと、言い方を変えればダラダラと同じことを繰り返し、競い合うことも忘れ勝ち取る喜びも失くし、新たな生産物の製作にも挑まず、だらけてしまったと言うのです。





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# by MemenCrital | 2011-12-24 20:58 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 7

 「そうではありません。女王様がお褒めいただけたということを耳にした他の商人たちが、それならばと出資をしてくれたおかげです。わたくし一人の力ではなにひとつ進まなかったことが、女王様の一言で動き出したのでございます。」
 商家は動じることなくそう答えました。
 
 「それすらも狙い通りであった、ということでは?」
 受け応えを聞き女王の目に警戒心が宿りました。これまでも何度も、こうしてお城の威光を借り自分自身の欲を満たそうとする輩が後を絶たずに訪れてきたのです。この男もそういった野望を胸に抱くものなのか?と恐れを感じました。
 
 「そうですね、最初は確かにそのとおりだったんですが、彼女らの踊りを見て段々と昔の笑顔を取り戻していくあなた様を拝見しておりましたら、その辺りのことは二の次になってしまいかけました。」
 商家は動じることなくそう答えました。
 
 女王はこの時、はたと商家の顔を眺めました。いつかどこかでお会いしたことがありましたかしら?と、その顔は言っています。
 
 「ご記憶に無いかもしれませんが、その昔この国の東にある小さなオアシスにてあなた様にお会いしたことがあります。」
 商家にそう言われて女王はハッと思い出しました。
 
 その昔、成人をもうすぐ迎える頃、東のオアシスで一度だけ旅する商人のキャラバンと会ったことがあります。その時、商隊の隊長を努める屈強な男の傍で、キラキラと明るい目で飛び回り用を言い付かる同い年くらいの男の子を思い出したのです。体型こそ変わり果て、今では恰幅のいい商人となった目の前の男に、その男の子の面影を思い出しました。
 
 「そなたはあの時の?」
 
 「はい。あの時のキャラバンの隊長は私の父でした。またあの時がはじめてキャラバンに参加した記念すべき最初の旅でした。その帰り道に寄ったオアシスで、望外にも私は自分自身の運命を悟ったのです。泉の傍にある木から、いずれ収めるであろう自身の国を眺め、希望と不安を胸に抱きながらも笑顔を浮かべる王女様を見て、いずれはこの方のために国を潤す立派な商人になろうと決めました。」
 女王はこの意外な申し出に思わずふきだしてしまいました。





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# by MemenCrital | 2011-12-24 19:15 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 6

 こうしてひと時の宴も過ぎ、それから暫くは何事も無く日々が流れていきました。
 
 商家の計らいで街に小さな劇場が建ち、大勢の人がそこを訪れたということです。
 
 
 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 
 何日かが過ぎたころ、再びお城に商家から登城したいとの申し出がありました。女王は即座に許可を下し、今度はどのようなことで驚かせてくれるのかと期待して待ちました。
 
 商家は女王の前に進み出ると、女王からのお言葉を待ちました。女王にしてみたらそのような形式ばったことはあまり好きではないのですが、自分の立場を思い出し、お言葉をおかけになりました。
 「本日はどのようなご要件でおいでですか?」
 
 商家は答えました。
 「先日はお喜びいただかれ誠にありがたく思います。おかげで彼女らのために劇場を設ける段取りがことのほかうまく進みまして、その感謝の意をこめてご挨拶に伺わせていただきました。」
 
 なんだ、ご機嫌伺いか。と女王は思いました。なんだ、今日は何も無いのか。
 「それはご足労でしたね。しかし私はあの場にて誉めただけのこと。劇場云々に関してはあなた様のご尽力でしょう。」
 




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# by MemenCrital | 2011-12-24 19:14 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 5

 「とても素晴らしいものでした。大変嬉しく思います。是非ともまた折を見て踊りを見せていただけたらと思います。」
 踊りの後に設けられた宴の席にて、女王は言いました。
 「何かこう、肩の荷がスッキリと降りていたような、それくらい素晴らしいものでした。」
 
 「畏れながら陛下、誠にありがとうございます。」
 踊り子はこの時はじめて言葉を口にしました。すっきりと透きとおりよく通る声でした。
 
 「もし願うなら宮廷にて踊りを学びますか?この国にも少なからず踊りはあると思いますし、必要なものは全てこちらでご用意させていただきますけれど。」
 
 踊り子は女王のその言葉に寂しそうに首を横にふり答えました。
 「誠にありがたきお言葉ではありますが、まだ幼いこの子らのことを考えますと、お城暮らしは贅沢が過ぎるような気がします。お気持ちをいただければそれだけで十分です。」
 
 「そう…そうなのね。」
 女王は何かを察して、そんな返事を返しました。
 
 「過ぎた暮らしは芸事をして生業を立てようという者には過分に不幸を呼び寄せてしまいます。お国をお納めされる方やお国をお守りになられる方々の前に出れば、私やこの子らの求めるものなど我侭至極にございます故。ただ、そこまでお褒めいただけたことはこれから先の自慢といたします。ご容赦いただけますでしょうか?」
 
 「そうね。是非ともお願いいたしますわ。」
 
 商家や男の家臣達は耳をそばだてながら、ふたりの会話の内容がいまひとつよくわからないでいました。女の家臣達と王女様の三人は、憧れと尊敬の念をこめてふたりの様子に目を凝らしていました。





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# by MemenCrital | 2011-12-24 19:12 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 4

 今度はざわざわと人々の戸惑う声がします。ピタッと停まった先ほどまでの歓喜が行き場を失ってざわめいているような、そんな様子です。
 
 やがて笛の音が静かにメロディーを奏で始めました。砂漠に沈み行く夕日が、聞くものの胸にありありと浮かんできます。踊り子はメロディーに乗り静かに踊り始めます。太鼓が時折ポンと音を奏でます。
 
 祭りの後、少し寂しく切ない感じの、しかし十分に満足したといった感情が女王の胸に染み渡りました。
 
 
 踊りはそうして次第に静かなエピローグの後、最初の立ち位置へと三人が戻った所で終わりを迎えました。
 
 周りからは割れんばかりの拍手と喝采。そうして女王は、何かスッキリと開眼したようなそんな想いで手を打ち鳴らし続けていました。
 
 







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# by MemenCrital | 2011-12-24 19:11 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 3

 「まずは拝見。すべてはそれからで。」
 女王のその一言がはじまりの合図となりました。
 
 太鼓の少女が、ゆっくりとしたリズムを打ち鳴らし、ゆっくりとスペースを作るように踊り子の右手に下がっていきました。笛の少女は太鼓のリズムが少し早くなった頃合に、踊り子の左手に下がりだしながら、静かな朝の目覚めを思わせるようなメロディーを奏で始めました。
 少女達の演奏に既に家臣や王子王女達から、感嘆の声があがりだしています。
 
 太鼓と笛の少女達が、周りで見守る家臣たちの輪から一メートルほど距離をおいて、ゆっくりと時計回りに、踊り子を中心に円を描いて回るように歩き出したとき、それまでじっと黙って立っていた踊り子の指が、ゆっくりと、まるで朝に花開く朝顔の花びらのような動きで円を描いて動き出しました。
 
 観客達は緊張してその指の動きに目を奪われています。
 
 肩からだらりと脱力をして下げた手の先で、指が、これから花開こうと波をうつようにゆっくりと動き出し、その動きが次第に肘から肩へ。そうして胸へ。やがて腰から膝へと波紋の広がりのように動き出していきます。瞑ったままの瞳がある頭部までじっくりと広がりを見せた頃、回りながら歩く太鼓の少女が音を停めました。その瞬間、踊り子と少女達ふたりは時が止まったようにその場で停止しました。
 
 見ているものはもう目が離せません。これからいったい何がどう始まるのかという期待が胸にこみ上げてきています。
 
 踊り子の瞳が、ゆっくりと開かれていきました。そうして小さく発した声が次の瞬間あたりを一変させるような、活気と喜びに満ちた勢いのある踊りを皆の前に広げて見せたのです。
 
 演奏する少女達は小走りに踊り子の周りを巡り走り、時に交差し、時に踊り子の傍を駆け抜け、踊り子はより高く舞い、より大きく舞い、開かれた瞳に見つめられた家臣は頬を上気させ目が離せなくなり、わずかひと時の間ににわかにカーニバルが訪れたような歓喜が城内を満たしつくしていました。
 
 やがてまた太鼓の音がピタリと鳴り止み、三者は再び停まった時の中で固まったように立ち尽くしていました。





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# by MemenCrital | 2011-12-24 19:10 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 2

 街には一軒の栄えた商家がありました。名高いその商家は、女王の代になってから街にでき、国外との取り引きや仕事の斡旋などを国民へ与え続け、いつの間にか国一番となっていました。
 
 ある日のこと、その商家の主から女王様にお目通りを願いたいと申込がありました。なんでも、これまで見たこともない踊りを踊る踊り子を紹介したいとのこと。女王は暫く考えて、スケジュールを調整し、願いを聞き届けた旨を商家に伝えました。
 
 それから暫くは女王の悩みが薄らぎ、日々明るく過ごせました。おかげで城内も雰囲気が明るくなり、安堵した長男の王子はさらにダラダラと時を過ごし、娘達は思い思いに飛び回っていました。ニ三の問題は起きましたが、どれもたいしたことなく簡単に片付けることができました。
 
 そうしてついにその日がきました。女王は朝から少しそわそわして、王宮の王の間で待ち続けていました。王子や王女達も勢揃いしています。家臣たちも手の空いたものは皆、王の間の前に広がる大広間を囲むように待ち構えていました。
 
 「商家様と踊り子様のお目通りにございます。」
 受付の家臣がよく通る澄んだ声でそう告げました。城内は少しざわざわとざわついたようでした。
 
 「お初にお目にかかります。商家のアシュワルハイマンと申します。これに居ります踊り子のソリア・カインシュターグを是非ともお城の皆様にご紹介したく、今回身の程もわきまえず登城の申込をさせていただきました。」
 城内に現れた恰幅のいい商家の男は、そういうと一人の女性を広間の真ん中までエスコートし進み出ました。
 
 「聞けば、これまで見たこともない踊りだとか?いったいどこの踊りなの?」
 女王は気さくにそう話しかけました。
 
 「生まれの地より齢6歳にして旅一座へと加わり、方々を踊り歩き訪れた地にてそこに伝わる踊りを学びて今に至るとのこと。なのでどこの踊りとは一言では言い表せませぬ。しいて言えば、ソリアの踊りとご記憶いただけましたら喜ばしい限りでございます。」
 商家はそう言うとニッコリと微笑み、広間の真ん中に踊り子一人を残し入り口へと下がっていきました。代わりに音楽隊でしょうか、太鼓を持った若い少女と、笛を携えた少女がふたり、踊り子の傍に進み出て、三人は女王に向って深く深くお辞儀をしました。





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# by MemenCrital | 2011-12-23 18:51 | 童語り:みんなのどうわ 

OASIS -クリスマス童話- 1

 今は昔、砂漠の国にひとりの女王がいました。夫である王様がある日「俺は俺の失くした何かを探しに旅に出なければならない」と書置きを残して旅にでて、気がつけばもう何年も、女王として頑張ってきたのです。今年成人式を迎える長男は未だに国を継ぐか自分の夢を追うかを決めかね、お城で日々をだらしなくおくっていました。妹にあたる王女が三人いて、みんな性格がばらばらで自分の好きなことに夢中な年頃でしたので余計に女王の悩みは尽きませんでした。
 国内はけれど落ちついた状態でいました。各界の友人達が女王の機嫌を損ねないようにとピリピリとしっかり働きまわり、時折疲れ果てて倒れるものはあっても、国は安らかでいました。
 
 女王はもともとこの国の王であった父と、遠く異国の地から嫁いできた母との間に生まれ、幼い頃はのびのびとしたどちらかといえば男の子のような性格でいました。東のオアシスにある一本の木が大層お気に入りで、よく父王や母の目を盗んではオアシスまで出かけ、一生懸命によじ登っては、広大な砂漠をひろくひろく見渡すのが好きでした。
 
 成人を迎える頃、そのオアシスでキャラバンと出会い、旅人達からここよりももっと広い世界があることを聞きました。以来、女王の本当の夢は、自由に世界中を見て回り、まだ見聞きしたことの無いものをこの目で見て、触れて、聞いて、話して、そして理解したいというものになりました。
 
 そんなことを思い描いていたにも関らず、伴侶であるはずの王に、それをされてしまったのです。しかも後は任せたと言わんばかりに、何もかも丸投げで。…女王の心中はその日からずっと穏やかではないものとなりました。
 誰かに今の役目を任せて、自分も同じように世界中を回る旅に出たい。けれど「後は任せた」と任せられる人材が私の周りにはいない。そもそも、任せていいものかどうかもわからない。私がいなくなればこの国はどうなってしまうのだろうか。いやいや、そんなことを考え出したらまた答えの出ない迷宮に引きづり込まれてしまう。どうしたらいいのだろう…。
 
 女王の悩みは尽きることがなく、日々もそれに応えるかのように問題を幾つも用意し、変わらないままをずっと繰り返し過ごしていたのです。そのおかげで国は安泰でしたが、女王の心はいつも葛藤と迷いの中にありました。
 
 
 さて、そんな女王の国ですが、実は大層大きな国となり、住んでいる家族は10万を越えています。家族を持たずに暮らす人々は1万ほど。旅をしてきて訪れる人は30万を越え、目当てはみな王宮の美しさと南東のオアシスに伝わる伝承を確かめようというものでした。
 
 南東のオアシスにある泉には、太古の昔に他の地より移り住んだ女神が住むと伝わっています。事実、深夜にその南東のオアシスを訪れると、女神の機嫌が良い時には泉が光り輝く日があるのです。女王の計らいで国とオアシスを繋ぐ街道には小さな明かりが設けられ、そのライトアップされた道を、大切な人と歩むと、幸せになるという噂まで生まれました。以来この地はずっと旅人が絶えることはありませんでした。



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# by MemenCrital | 2011-12-23 16:44 | 童語り:みんなのどうわ 

遠き異国の12月24日

「鏡面反射機能に、少し異常が見られますね。」
コトコトと湯気を立てる、ずいぶんと古くさいストーブの上でヤカンがコトンと音を立てた。
ボロくさい木造家屋の壁一面には、色々なクレヨンでごちゃ混ぜに描き殴ったような
不思議な絵が、腰の高さに所狭しと広がっている。
「シグマ-3号、聞こえていますか?」
白衣の、物腰の柔らかい優しい声が俺に語りかけている。

「聞こえていますが、意味がわかりかねます。そんな機能なんてこれまで聞いたこともない。」
ぶっきらぼうに平坦に声が出た。
「この機能は本来異常をきたすようなものではないのです。だからあまり耳にしないのでしょう。」
ふわりと、軽い羽のようなその声に、ついつい引き込まれてしまう。
「その、本来異常をきたすようなものではない機能に、なんで異常が現れたりするんですか?」
気持ちはイライラしているのに、なぜか穏やかな口調が口をついて出てしまった。

「考えられるとしたら・・・、あなた最近、ストレスを抱えていませんか?」
また、ヤカンがコトンと音を立てた。

ストレス?
「そんな人間らしいものを感じ取る機能がついているなんて、やはり聞いたことがありませんが。」
なかなか核心を突かないやりとりに感じるこの気持ちは、そのストレスなのだろうか?
「シグマ-3号。あなたもれっきとした人間なのですよ。」
ふと見上げたその表情は、優しい慈愛に満ちていた。と、目は認識した。
「まったく、おかしな国だ。人を役割に応じて生まれた時から生き方を押し付ける。そんなだから誰も彼もがあなたのように自分を人間ではないと思い込んでしまう。」
彼女は、本気でそう言っている。と、耳はとらえた。
「シグマさん。少し外を歩きませんか?」
その問いかけに反応して窓の外を見ると、昨夜降り積もった雪がうっすらと地面を覆っているのが見えた。
答えを聞かずに、白衣の彼女はおんぼろのドアをガタガタと音を立ててあけ、部屋から廊下へと出て行った。




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# by MemenCrital | 2009-12-23 00:45 | 童語り:みんなのどうわ 

クリスマスな夜の夢

2009年 クリスマス童話をみんなで♪ 参加作品。

クリスマスな夜の夢 (1)
クリスマスな夜の夢 (2)
クリスマスな夜の夢 (3)
クリスマスな夜の夢 (4)

ひさびさすぎてさらにとりとめもまとまりもない・・・
お読みいただければ感謝です

こんなですみません m(_ _)m
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# by MemenCrital | 2008-12-25 10:30 | 童語り:みんなのどうわ 

クリスマスな夜の夢 (1)

クリスマスな夜の夢 (1)


あるクリスマスの前夜
ひとびとが寝しずまった頃
とある洋館に、ひとつの光りがそっとおりたちました。

「今夜こそみてろよ・・・」

その光りは、誰にも聞こえないような声でそうつぶやき
窓から中にはいりこんでいきました
部屋の中には、ところせましとオモチャがあります
ブリキでできたお人形
小さなプラスチックのお人形
昔はやったオモチャのあれこれ

「よーしお前ら、今年もよろしくたのむぜ!」

そういうと、光りは小さな妖精の姿になり
手にした棒を振り上げました

そこへ

「誰だい?きみは」

妖精がたつ窓べりのすぐ下から声が響きました

「なんだ?既に魂の入った奴がいるのか、今年は」

妖精は質問に答えずそう言います

「僕は用無しのくるみ割り人形だよ」

声の主はちょっと寂しそうにそうこたえました

「俺は妖精のパックっていうんだ」

そういうとこんどこそ、妖精は手にした棒を振り上げて
部屋の中にむかって振り回しました

「ほらおきろー!てめえら、めざめろー!」

するとどうでしょう
部屋中のオモチャたちがとたんに目覚めて
あたりはガヤガヤとにぎわしくなったのです

「今年こそしっかりとやれよ!去年みたいにおじけづくなよ!」

妖精のパックはそういってみなの前に立つと
なにやら一枚の紙を懐から取り出して
そして
オモチャたちを集めてなにやら話しかけはじめたのです

「いいか、今年の作戦は東の国から仕入れてきたものだ。ぜったいにうまくいくから、お前らドジすんなよ」

クリスマス前夜の、巷では皆がにぎやかにお祭り騒ぎの夜
はてさて
いったい何がおきますでしょうか?


2009年 クリスマス童話をみんなで♪



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# by MemenCrital | 2008-12-25 10:00 | 童語り:みんなのどうわ 

クリスマスな夜の夢 (2)

クリスマスな夜の夢 (2)


「お前とお前は燃えなさそうだからその暖炉の中な」

パックはオモチャたちに次々と命令していきます。それを見ていたクルミ割り人形はこうたずねました。

「いったい何をするの?彼らは燃えないだろうけどこげついちゃうよ」

「平気さ、どうせ最後には・・・っと。お前とお前とお前はそう、そこの洗面台の蛇口に隠れてろ」

聞いても答えてくれないと思ったのか、くるみ割り人形はそれきり黙って座り込んでしまいました。
大勢いたオモチャや人形達は、あっというまに、部屋のそこらじゅうに隠れ、ついにパックはくるみ割り人形にこう言いました。

「よし、全部準備ができたな。次はっと、お前、名前なんていうんだっけ?」

「さっき言ったろう。用無しのくるみ割り人形だって」

くるみ割り人形は少し機嫌が悪そうです。

「名前を聞いてるんだよ、それ名前じゃないだろう」

「そうなのかい?」

「そうだよ。それは俺様が僕は妖精だよって相手を小馬鹿にするときに言うのと一緒だ」

パックはそういって自慢げに鼻を指差します。

「小馬鹿って?」

「そんなのいいから、名前は?なんていうのさ」

「覚えてない」

くるみ割り人形は少しだけ寂しそうにそう言いました。

「ナナシのなんとかか。しょうがねえ、ボトムでいいか?いいな。よし、ボトム、一緒に来い」

強引にそう名づけられて、くるみ割り人形のボトムはパックと共に玄関の外へとやってきました。

「この上にのぼって待つぞ。のぼれるか、ボトム?」

「うん、頑張ってみる」

ふたりは玄関の柱をせっせとのぼっていきます。

「パック、羽があるんだから先にのぼってていいよ」

「よけいなこと考えないで。ほら、さっさとのぼる」

そうしてふたりは、ついに玄関の上にある小さな屋根へとのぼりつきました。

「お前、意外とやるじゃん」

パックはそういってボトムをゴツンとこづきました。

「ありがとう。一緒にのぼってくれたからだよ」

「馬鹿いってんじゃねえよ。羽で飛ぶ方が疲れるからのぼったんだよ」

パックはそう毒づきます。ボトムはその様子を見て笑顔になりました。

「ここで何をすればいいの?」

「それはもう少し後になったら教えてやる」

「まさか、ここから飛び降りたりしないよね?」

「まさか」

いいながらパックは鼻をポリポリ掻きました。

「ボトムってなんで?」

「なんでって、ちょっと前にからかった人間の名前だよ」

「そうなの?」

「いちいち細かいこと聞かないで、知りたかったら勉強しろ」

「え?」

夏の夜の夢って本がどこかにあるから、それを読めって言ってんだ」

「なんだ、教えてくれないんだ」

ボトムはそう言うとうなだれてしまいました。

「ちぇ、しょうがねえなあ。わかったよ、あとで教えてやる」

パックのその一言に、ボトムはウキウキとしてきました。

しだいに夜が深くなっていきます。
もうしばらくすると雪が降りそうな空です。

はてさて、パックはいったい何を計画しているのでしょうか?
そして、どうなりますことやら。謎は深まるばかりです。



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# by MemenCrital | 2008-12-25 08:00 | 童語り:みんなのどうわ 

クリスマスな夜の夢 (3)

クリスマスな夜の夢 (3)


ひととおりの準備がすんだのか、さきほどまでのにぎやかさがうすれ、洋館は静まりかえっています。そこここかしこでひそひそと、なにやらみんなで話しこんで時をまっているようです。

「ねえねえ、いきおいよく飛び出せばいいのかな?僕」

「いっせえのせ、でいこうね、みんな」

「俺はどのタイミングで出ていけばいいんだ?」

「しらないよそんなの。パックに聞かなかったのかい?」

ぼそぼそとそんな声が、ひそひそと室内にまぎれ、ドキドキわくわくするような、そんな気持ちであふれています。
そんな中、外に出て、玄関の上にある小さな屋根の上にいる、ふたりの様子はというと・・・。

「へー、ボトムそんな長生きなのか。俺といい勝負かもな」

「パックってどれくらい前に生まれたの?」

「さあね」

「さあねって?」

「わかんないって言ってるの。そんなことしらないもの」

「じゃあ、いい勝負かどうかなんてわからないじゃないか」

「それよかさ、ボトムはなんで役立たずとかって自分のこというんだ?」

「・・・用無し」

「こまけえな。んじゃ、なんで用無しなんだ?」

「もうどこへいったってクルミを割るのに僕を使おうなんて人はいないから」

「へー、そうなんだ」

「うん」

「くるみって割るのたいへんなのか?」

「うん、すごく硬いから人の手じゃなかなか割れないよ」

「石でたたいたら割れる?」

「どうかなあ?」

「石で割れるなら別にお前いなくてもいいもんな」

そういわれて傷ついたボトムは、うっすらと目に涙をためて黙り込んでしまいました。

「あ、そういう意味じゃなくってさ、えと、ほら、その・・・」

「いいんだ」

「いやだからさ、ほらつまり、えっと」

「どうせもう僕、クルミなんか割りたくなかったから、いいんだ」

「そうなの?」

「割れたって喜んでもらえるのは最初のうちだけだし、しばらくしたら割れて当たり前になるし、僕の部品とか欠けてクルミが割れなかったりするとすぐ用無しっていわれて捨てられちゃうし」

「まあ、クルミが割れなきゃそうだろうなあ」

またまた、ボトムはひとみから今にも涙がこぼれおちそうなほどに涙をためて、気持ちをこらえています。

「でもほら、クルミを割りたくて人間はお前をつくったんだろうから」

「そんなの・・・つくった人に聞かなきゃわかんないやい」

「あ、そうか。ひょっとしたらくるみ割るってのがオマケかもしれないもんな?」

「それはわからないけど・・・」

ふいに、パックはあることを思いついて言いました。

「ボトムは、クルミ以外のものは割れないのか?」

「そんなことしたら壊れちゃってクルミが割れなくなるじゃないか!?」

ボトムは驚いたようにききかえしました。そんなことをしたらとんでもない、ますます用無しになってついには捨てられてしまうじゃないか。ひょっとしたら薪がわりに暖炉にくべられてしまう。そう考えるととても怖くなりました。

「やったことねえんだな。じゃあやってみればいいのに」

「だめだよ、ぜったいにだめ!そんなことしたら燃やされちゃうよ!!」

「でもボトムさ、さっきもうクルミなんか割りたくないっていった」

「そうだけど・・・」

「クルミを割らないでいいなら、他になにかためしたって別にいいだろう?」

「パックは自分のことじゃないからそういえるんだよ。そんなことしたら、ううん、そんなこと試すって考えただけでもおっかなくって・・・」

「おっかなくって?」

「それならまだ、だまって飾られている方がいいよ。だって怖いもん」

「まあ、いいや。俺の知ったこっちゃないことだし」

ドキドキしながらボトムは何度も、例えば人間がクルミ以外の何かを割ろうとして自分を使うことを想像しました。ブルーベリー、イチゴ、トマト、レタス、白菜、ジャガイモ、しいたけ、なにかのネジ、びーだま、ゴルフボール

「どれもこれも柔らかすぎるか、かたすぎてだめだよ」

「何が?」

「パックがいったんでしょう。クルミ以外のなにかを割れないかって」

「そうだっけ?」

「なんだよ!無責任だなあ」

「し!きたぞ!!」

パックの声に驚いて身を伏せると、なにやら玄関に、大きな人影が近づいてきたけはいがします。そのとたんに、さっと、洋館はしずまりかえりました。まるでなにごともなかったかのように。

「しっかりたのむぞ、ボトム」

え?でもまだ何をするのかきいてないよ、とボトムはパックに聞こうとしましたが、静かにと唇に指をたてるパックの動きになにもいえなくなり、そうしてそのままじっとするしかありませんでした。

ズシン!

足音が近づいてきます

ドシン!

玄関に立ちました

がちゃり

玄関のドアノブが回されたようです

ぎぎー

ドアが開いて、けはいが中にはいっていったのがわかりました。

「こっち、しずかにな」

静かにそう言ってパックは、玄関の屋根からひかりをとりいれるためにつくられた窓へと、さっと移動していきます。ボトムも慎重に音を立てないように、そちらへとむかいました。

「いよいよだぞ」

へへっと小さく笑って、パックは洋館の中をのぞきこんでいます。
ボトムもようやく窓へとたどりついて、パックのとなりから中をのぞきこんでいます。

どこからか、鈴の音がシャンシャンと聞こえてくる聖なる夜。
そんな夜にふさわしくない顔をしてニタリと笑う妖精と
まるでなにが起こるのかわからないでおどおどしている人形

この先は
また後ほど



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# by MemenCrital | 2008-12-25 06:00 | 童語り:みんなのどうわ 

クリスマスな夜の夢 (4)

クリスマスな夜の夢 (4)


「ボトム、しっかりみろよ。あれが俺たちの敵のおやだまだ!」

キッと唇をかみ締め、押し殺したようにパックはそう告げた。
その瞳にはここへくるまでに落とした、仲間達を思う悲しみの光りも混じっている。
お前ら、今夜こそきっと仇はとる。
そう告げているかのようである。

「パック、なにをひとりでぶつぶつと言っているのさ?」

「え?いやなに、場の雰囲気をもりあげようと思ってさ」

「へんなの」

さて、部屋の中ではいよいよ人影が暖炉に近づこうとしていました。手には新聞紙のきれはしとライターをもっています。
しゅぽっとライターに火がつきました。
その火を新聞紙にもえうつらせて、それをそのまま暖炉の中へ・・・。

「あちー!!!!」

なにものかがそう叫んで暖炉の中からとびだしました。

「あ!ばか!!」

みるとそれは頭の一部が黒くこげたブリキの人形です。

「なにをしている、きさま?」

人影はこともなげにそうつぶやくと、暖炉に火がともり明るくなる前に台所へといどうしていきました。

「あのブリキ野郎め、ぶちこわしじゃあないか」

パックは悔しそうにそう言いました。けれどすぐに気をとりなおして、こう言いました。

「でもみてろ!次は手ごわいぞ、くくくく」

「パック、ものすごく悪者の顔してる」

「クルミ割る物、なんちゃってな」

そのとたん、台所の方から大きな音が響きました。がっしゃーん!

「やったか!?」

「え?なにが?」

すると、台所から何事もなかったかのように人影が出てきます。
汗をかいたのかなにやら大きな布で顔をふいているようです。

「あれれ?台所ぐみもだめだったのか」

パックには、きづきようもありませんでしたが、実はパックたちがいるすぐ横に、台所へと通じる換気扇の空気穴がとおっていたのです。
さっきの音は、ついさきほどの会話を聞いていたフランス人形が、ふいをついて発せられた駄洒落に思わずふきだしてしまい、隠れていた戸棚をころげおちてしまった音だったのです。
暖炉のときとおなじで、そのほかに隠れてドキドキしていたみんなは、なにが起こったのかと気をそがれてしまい、けっきょく飛び出すことができませんでした。

「なかなかやるな」

パックはそう言いながら、次の一手に賭けようと決意しました。
次こそ、次の一手さえ決まれば、あいつらの敵討ちができる。
みてろお前ら!星になってみてろ!お前らをあんなにむごい仕打ちで・・・

「ねえパック!だからひとりごとなの?それ」

「いや、なんでもねえ。つぎだつぎ!」

部屋の中では人影がなにやら着替えているようです。
そうして着替えおわったのか、彼は玄関へと向かって歩き始めました。

「いよいよだ。俺たちも準備するぞ!ボトム!」

「え?」

「いいから、こっちこい!」

パックにひかれて、ボトムは屋根のはしへとつれていかれました。

「いいかボトム、俺がいくぞって言ったら何も言わずここから飛ぶんだ」

「!?」

ボトムは口ごたえできないように口をふさがれています。

「声を出すな。あいつに気づかれちまう。いいか、あいつはとんでもなく悪い奴なんだ。もう何年も前からお前達オモチャや人形を袋につめて、奴隷のようにどこかへ売り飛ばして暮らしているんだ」

「!!」

「そうだ、わかるだろう。お前もほっとくとあいつに売り飛ばされて、どこかよくわからないところで、イチゴだとかよくわからないネジだとかプラスチックのかたまりだとかを潰さなきゃならなくなるんだぞ」

「!!!」

「だろう、だから今ここで退治しとかなきゃいけないんだ。いいな、わかったら言うとおりにしろよ」

ボトムは強くうなづきました。

そうこうするうちに、玄関のところでガチャリと音がしました。ついで「お!?」っとうめくような声がして、ドシンと何かが倒れるような大きな音がひびきわたりました。

「今だ!いくぞ!!」

そのときボトムは一心に願って飛びました。クルミ以外のものを割るなんて嫌だと。

どんっと
何かにぶつかる感じがしました。
やわらかくあたたかいものです。

ぎゅっと
つかまれるのをさっして
ボトムは必死になってそのつかんでこようとする手を、はさんで割ろうとします。

ぱっと
なにかが頭をおさえました。

ああ、だめだったか。これで僕はクルミ以外のものを割る人形になってしまうのだな、とボトムは嘆きました。

「ああ、これで僕はクルミ以外のものを割る人形になってしまうんだな・・・」

「なにを言っておるんじゃ?クルミ割り人形よ」

「え?」

「今年はな、アメリカの大きなクルミ農家で子供が生まれたらしく、その家の主がその子のためにお前をほしがっていたぞ」

「あなたは・・・?」

つかまれた手をそっとほどかれ、いつの間にか暖炉の前に立つ人影は、あかりの中でよく目をこらしてみると、真っ赤な服に、白いそでぐち。真っ白いのはそれだけではなく、顔中をおおうようにふさふさにはえた白いひげ。

「サンタクロースさん?」

「そうじゃ。この日ばかりはサンタクロースじゃ」

にっこりと笑った顔はとても暖かくて、さきほどパックに言われたことが全てすっ飛んでいってしまうほどです。

「そしてまたの名を・・・」

「オーベロン!はなせー!!馬鹿妖精王め!はなせってばよ!」

パックがもう一方の手に強く握られてあがいています。

「うおっほん。まったく、パックには毎年こまったもんだ。私はこれをしないと妻であるタイターニアにとんだ目にあわされるのだぞ?それをわかってやっているのか、お前は」

「知るかそんなの!そんなことよりこないだとってきた露草の蜜を分けてくれるって言ったじゃないか。その約束がまだ はたされてないぞー!!」

「やれやれ、そんなことか。毎年毎年、たわいもないことで根にもってここ一番でつっかかってきて・・・はあ。妖精王なぞやめたくなってきたわ」

「やめちまえー!」

「うるさい、パック!お前は罰として向こう一年間タイターニアの元へ貸し出すことにする」

「えー?!」

「そうすりゃ少しは、私の苦労も身に沁みることだろうって」

「いいもん、そうしたらタイターニア様に露草の蜜をたくさんとってきて、その分け前を山ほどもらえるからな」

「ば、ばかもん!私がケチみたいな言いかたをするでない」

「本当のことじゃんかよー」

その間ずっと、クルミ割り人形はポカンとして白いひげが上下するのをながめていました。なにが起こったのかまるきりわかりません。

「おうおう、すまんかった、クルミ割り人形よ。まったくパックのいたずらにも困ったもんだ。さっきちらっと言ったが、それで問題はないか?」

「僕がまたクルミを割る役にたてるの?」

「おお、そうじゃ。アメリカで一番のクルミ農園でな、そこの農場主だから、子供の目の前でたんとクルミを割って見せてくれるじゃろう」

「喜んでもらえるの?」

「まだ生まれたてのこどもだからな。とうぶんはキャッキャとお前を喜んでくれるじゃろう」

「その子が大きくなったら?」

「大事に大事にしてくれるじゃろうて。生まれたときからある人形としてな」

「もう用無しじゃあなくなるってこと?」

「用無し?とんでもない。クルミが割れようが割れまいが、お前は用無しなんかじゃないよ」

優しい声でそういわれて、ボトムは気持ちが膨らんでいくのを感じました。

「では、了解ということじゃな」

あふれる気持ちがわっと、ひとみからながれおちて、それがとまらなくなるのを喜んでいます。
もう用無しなんかじゃないんだ、と思う反面、心のどこか片隅で少しだけ、さっきまでパックといたことを思い出していました。
用無しなんて僕が勝手にそう思い込んでいただけかもしれない。
パックは僕を、なんでもないただの人形として遊んでくれてたのかもしれない。
だって、一緒に屋根までのぼったもんな・・・。




クルミ割り人形のボトムはこうして、アメリカにあるクルミ農場へと届けられ
そこで末永く幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。




モア!
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# by MemenCrital | 2008-12-25 04:00 | 童語り:みんなのどうわ 

ケンサク爺

 通りをひとつまたいだ先の、赤い郵便ポストがまだおいてあるタバコ屋を左手にみて、その角を右へと入った路地の先にそのお爺さんは住んでいた。スラリとした背の高い、身だしなみもよいお爺さんで、近所の人からも慕われていて、こんな時代なのに小学生や中学生なども彼を慕い、休みの日には笑い声の絶えない。

 子供達はお爺さんのことを、検索爺と呼んでいた。お爺さんに何かをたずねると、お気に入りのノートパソコンで何かをカチャカチャと打ち込み、ほんの数分で答えが返ってくる。そうして決まってこう言うのだった。
「でも、これは正確じゃあないですから。」
せっかく答えを得られてもお爺さんが真顔でそういうので、子供らもキョトンとしてしまって。けれどお爺さんは優しく微笑みながらそう言うものだから、みんなそれでも納得してしまう。

 いつか、子供のひとりがお爺さんにそのことをたずねてみた。そうするとお爺さんはぼんやりと空を眺めながら、こう言ったのだと言う。
「例えば、一番人気のある犬は何?と君が聞くでしょう。その答えをこうやってサーチすると、確かにそれらしい答えは返ってくる。けれどもね・・・」
けれどもと、お爺さんは言葉を繋いだ。
「けれどもね、犬の人気を聞いた君の意図は、どこにあるのかなって僕はサーチしながら思うんですよ。君がほしい答えは、お店で一番に売れている犬なのかな?とか、友達に自慢できる犬なのかな?とかね。わかるかな?」
そう言われてその質問をした子供は、難しい顔をしたという。
「だって、検索爺はわけのわかんないことを言い出すんだもん。俺が何を聞きたかったかってそんなこと、一番に人気のある犬は何かってことなのにさ。」
結局のところ、お爺さんはその検索結果をどうにかしてその子に見せたようだ。子供は喜んでその犬の名前を覚えて帰り、暫くしてまたお爺さんの所へ来て、こう言ったという。
「うそつき。教えてくれた犬は今はもうたいして人気ないんだってさ。お母さんがそう言ってたよ。」
「それはすまなかったね。お母さんはどんな犬が人気だって?」
「なんかさ、よくわかんない小さなかわいこぶりっこな、目がぎょろって飛び出してる犬。あんなの、かっこ悪くて散歩とか一緒にしたくないや、俺。」
「そうか、そうか」
そしてお爺さんはニコニコとわらう。

 通りをひとつまたいだ先の、赤い郵便ポストがまだおいてあるタバコ屋を左手にみて、その角を右へと入った路地の先にそのお爺さんは住んでいた。スラリとした背の高い、身だしなみもよいお爺さんで、近所の人からも慕われていて、こんな時代なのに小学生や中学生なども彼を慕い、休みの日には笑い声の絶えない。

 子供達はお爺さんのことを、検索爺と呼んでいた。お爺さんに何かをたずねると、お気に入りのノートパソコンで何かをカチャカチャと打ち込み、ほんの数分で答えが返ってくる。けれどその結果は必ずしも、正確なものではないらしい


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# by MemenCrital | 2008-09-17 22:28 | 夢語り:きみと逢うマチ 

夏の夢一夜 (1)

夏の夢一夜


夕方から降りはじめた雨が、夜の訪れとともにあがった。街には星空のような明かりが瞬き、人々はそのひとつひとつの明かりの中で、家族とくつろぎ、恋人と語らい、みな誰かと過ごしている。やがて上空を流れる風が、雲を押し流してゆき、空には幾星霜の星が瞬きだした日、ひとり



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# by MemenCrital | 2008-08-05 23:20 | 幻語り:夏の物語 

夏の夜

サンフランシスコの桟橋で
歌うたう人々の
憂いを笑顔に変えようと
うたっていた笑顔思い出して

閉じ篭りの青年も少女もみな街へと出かける夏
夜には夜の憂いがあり
人と分かち合うことで憂いは、優しさへと変化していく
心閉じ篭って誰とも会話できぬ大人たちの
中へと
モモのような純粋な心を持った若者達が

街へと
出て行こうとしている

心開いて
受け入れてあげて
彼らは何も知らない
あたりまえのことは
学校でも塾でも家庭でも地域でも
誰も教えてはくれなかったから
けれど彼らや彼女達の感性と憂いは
あなた方の優しさを呼び覚ます

始まりの物語はあなたのその手で紡ぎはじめることが必要

この物語の本編は
この夏のあなたの周りで
おきる
夏の夜の物語



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# by MemenCrital | 2008-07-27 21:02 | 小語り:短編・掌編 

猫がゆく!(2)

とにかく、街の中は何もかもが分担されていて
しかも肝心なことはたいして多くもないものですから
一匹一匹のやることはたかがしれていました

海辺で日がな一日、尻尾をたれて魚を捕まえる担当
みんなの寝床を綺麗にする担当
疲れている猫の猫背をさする担当

年寄り猫は子猫の世話をかってでて
また子猫は年寄り猫をおおいに楽しませ

血気盛んな雄猫は街の中心で喧嘩を楽しみ
また時に血気盛んな雌猫にボコボコにのされ

食べるものに困ることもなく
時折、流行り病などで悲しみに暮れることはあれど
痛んだ心を支えあう仲間猫にみな囲まれて
悲しみも楽しみもまんべんなく分かち合う
そんな暮らしを皆でおくっていたのです。

温かな日差しを浴びてゴロゴロと昼寝をしたり
魚があまりとれないときは大勢で尻尾を海にとたらしたり
雄も雌も関係なく
老い若いも関係なく
できることをできるだけ
それだけで十分な幸せを、みな手にしていました。

チュウタもそうして過ごしながら過ごす日々の中で
けれどほんの少し物足りなさも感じ
仲間に紛れて暮らしていたあるひ
島の外から奇妙な一団が訪れました
海に浮かぶ大きな乗り物に乗り
十数匹の一団は街へ入る許可を求めました

年寄りたちは困惑を隠せず
雄猫達はいきりたち喧嘩を仕掛けようとしましたが
一団は意にかえしません
やがて彼らはこの街に
海を越えた先にも世界が広がり
様々な猫や他の動物達が
思い思いの願いを持って暮らしているのだと
言葉でそうと言ったわけではないのですが
なんとなく
この街の猫達はそう感じていったのです

チュウタもそう感じた一匹でした

育ての親でもあり師匠でもある野良猫は
早々と彼らの乗り物に乗り込み
彼らが街を離れる日
チュウタの前から姿を消しました。

「どこに行ったとしても俺は俺で、お前はお前だ」

それが最後の言葉であり
その日からチュウタは
いつか海を越えて旅立ちたいと
強く願うようになったのです

こうしてまた暫く月日は流れていきました。



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# by MemenCrital | 2008-04-04 02:22 | 童語り:みんなのどうわ 

猫がゆく!(1)

日差しぽかぽかとあたたかな季節に
小さな島に猫達の住む都市がありました。

歴史の深いその都市では
猫だってみな支えあって
いろいろな役割を分担して
楽しく気楽に長い時を暮らしていました。

そう、どれくらい長いかと言えば
その島に猫達の祖先が移り住んできたのが
今から数えて8万回以上の季節を過ぎたくらい。
春が来て夏になり秋を過ぎて冬となって
それをもう何度となく繰り返してきていたのです。

さて
そんな町にいっぴきの猫がいました。
名前はチュウタ
名付け親は幼かったころ出合った一匹の野良猫でした。

「お前はそのままだとどうしようもないわがまま猫になりそうだからな」

そう言ってチュウタと名付けられたのですが、チュウタはそんな名前にも縛られることなく
わがまま気ままに生きてきてしまいました。
呆れた野良猫はこう言いました。

「ねずみのように大人しくなれと思ったのだが、裏目にでたか。大人しくなるどころか余計に気ままになりやがったな」

それも仕方のないことかもしれません。
チュウタはねずみを見たことがない世代に生まれたのですから・・・。
同じころに島で流行った歌にもうたわれています
「ねずみを知らずに僕らは生まれた~♪」
ニュージェネレイションという言葉をひしひしと感じながら
野良猫はチュウタを見ていいました。

「こっからは独立して、なんでも自分で世話をするんだぞ。
飯の食い方は教えたな。
走り出したあと方向転換はどうしたら良いのかも覚えたな。
あとはまあ、みんなに混じって生きて行くうちに身につくだろう。
つかなかったら俺のような野良って道もあるのだから
あまり気張らずに生きて行くことを精一杯楽しめ」

そうしてチュウタはひとりになりました。

今回の物語は、ここからはじまります。
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# by MemenCrital | 2008-03-31 15:22 | 童語り:みんなのどうわ 

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