OASIS -クリスマス童話- 1

 今は昔、砂漠の国にひとりの女王がいました。夫である王様がある日「俺は俺の失くした何かを探しに旅に出なければならない」と書置きを残して旅にでて、気がつけばもう何年も、女王として頑張ってきたのです。今年成人式を迎える長男は未だに国を継ぐか自分の夢を追うかを決めかね、お城で日々をだらしなくおくっていました。妹にあたる王女が三人いて、みんな性格がばらばらで自分の好きなことに夢中な年頃でしたので余計に女王の悩みは尽きませんでした。
 国内はけれど落ちついた状態でいました。各界の友人達が女王の機嫌を損ねないようにとピリピリとしっかり働きまわり、時折疲れ果てて倒れるものはあっても、国は安らかでいました。
 
 女王はもともとこの国の王であった父と、遠く異国の地から嫁いできた母との間に生まれ、幼い頃はのびのびとしたどちらかといえば男の子のような性格でいました。東のオアシスにある一本の木が大層お気に入りで、よく父王や母の目を盗んではオアシスまで出かけ、一生懸命によじ登っては、広大な砂漠をひろくひろく見渡すのが好きでした。
 
 成人を迎える頃、そのオアシスでキャラバンと出会い、旅人達からここよりももっと広い世界があることを聞きました。以来、女王の本当の夢は、自由に世界中を見て回り、まだ見聞きしたことの無いものをこの目で見て、触れて、聞いて、話して、そして理解したいというものになりました。
 
 そんなことを思い描いていたにも関らず、伴侶であるはずの王に、それをされてしまったのです。しかも後は任せたと言わんばかりに、何もかも丸投げで。…女王の心中はその日からずっと穏やかではないものとなりました。
 誰かに今の役目を任せて、自分も同じように世界中を回る旅に出たい。けれど「後は任せた」と任せられる人材が私の周りにはいない。そもそも、任せていいものかどうかもわからない。私がいなくなればこの国はどうなってしまうのだろうか。いやいや、そんなことを考え出したらまた答えの出ない迷宮に引きづり込まれてしまう。どうしたらいいのだろう…。
 
 女王の悩みは尽きることがなく、日々もそれに応えるかのように問題を幾つも用意し、変わらないままをずっと繰り返し過ごしていたのです。そのおかげで国は安泰でしたが、女王の心はいつも葛藤と迷いの中にありました。
 
 
 さて、そんな女王の国ですが、実は大層大きな国となり、住んでいる家族は10万を越えています。家族を持たずに暮らす人々は1万ほど。旅をしてきて訪れる人は30万を越え、目当てはみな王宮の美しさと南東のオアシスに伝わる伝承を確かめようというものでした。
 
 南東のオアシスにある泉には、太古の昔に他の地より移り住んだ女神が住むと伝わっています。事実、深夜にその南東のオアシスを訪れると、女神の機嫌が良い時には泉が光り輝く日があるのです。女王の計らいで国とオアシスを繋ぐ街道には小さな明かりが設けられ、そのライトアップされた道を、大切な人と歩むと、幸せになるという噂まで生まれました。以来この地はずっと旅人が絶えることはありませんでした。
[PR]
トラックバックURL : http://mentalc.exblog.jp/tb/14231438
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
by MemenCrital | 2011-12-23 16:44 | 童語り:みんなのどうわ | Trackback

泣く、笑う、怒る、楽しむ。そんなことが自然にできる、そんな世の中であればいい。


by Memen