昔見た夢の記憶

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 それは昔のことなのか、それとも明日のことなのか、誰に聞いてもわからないできごと。

 夕焼けがとても綺麗で、橋の上から携帯で写真を撮った。そしてその写真を、普段から使い続けていたブログにアップしてみた。するとこれまた普段からつきあい?のある、ブログ仲間のみんながコメントを書き込んでくれた。

 「素敵な夕焼けだね。」

 「神々しいね。」

 「まるで見たことがない景色だ。素晴らしい。」

 駅までの道のりを歩いて向かっていきながら、心は晴れ晴れとしていた。明日のことを考えると少しばかり気が重くなるが、足取りは軽かったのを覚えている。

 気がつくと、交差点に差し掛かっていた。見ると信号が赤く点灯している。

 「まいったな。急がないと面接に間に合わないぞ。」

 そうつぶやいて、道路の左右を見回す。どちらからも車の来る気配はない。

 「いっか。急ごう。」

 つぶやいて交差点に一歩足を進めた。とたんに、足元をなにか、流れる水のようなものに絡め取られるような感触に襲われ、次の瞬間には一気に道路のアスファルトに肩口まで沈み込んでしまった。いったい何事だと驚くよりも先に、口の中に入り込もうとするゼリーのような状態になったアスファルトとの格闘に意識は集中していく。

 やがて、数十メートルほど流された先で、先ほど渡ってきた橋がみえた。橋の欄干からどうしたものかロープが垂れ下がっている。必死になって手を伸ばし、アスファルトに沈むもう一方の手と足で体を精一杯浮かび上がらせる。そうしてなんとかそのロープに手が届いた感触がした。

 腰から下をアスファルトが、ゼリー状になって流れていくのを感じる。つかまえたロープに両手をかけて、一気に登ろうと腕に力をこめていく。

 こんなことになるなら、今日の昼飯を抜かなきゃよかったと思った。夕飯を早めにとればよかったとも思った。力をこめてロープを引っ張るように登りながら、誰か助けてくれる友達をつくっておけばよかったと、そんなことも思った。

 ようやく腰がアスファルトから抜け出て、そうして膝にあたる流れの勢いに負けまいともうひと踏ん張り。

 助かったら、喧嘩してそれきりのアイツに謝りに行こう。そういえば去年帰ったきりでずっと会っていないあいつらにも会いに行こう。父さんや母さんにも会いたいな。別れた彼女のところにも行きたい。世話になった先生のところにも行こう。

 そうして片足が出て、体がほぼすべて道の上に出た。

 よかった。これでまたみんなに会いにいける。

 そう考えながら振り向いた橋の向こう側に、沈みかけた太陽と、さっきよりもより一層濃いオレンジ色に染まった夕日が見えた。その美しさにぼんやりと見とれていると、不意に背後から強烈な衝撃が全身を襲った。

 体が高く舞い上がるのを感じながら、あたりの動きは非常にスローモーなのを見て取れた。橋の上でマラソン姿の女性が、こちらを指さして驚いた顔をしている。すぐ足元にトラックの運転席が見えて、ドライバーがスマホを片手に血の気の引いた顔をしていた。反対側の通りをゆく車の運転手が、驚きの顔でこちらをみている。そうしてまた空を見上げると、虹のグラデーションに彩られて、綺麗な夕焼けがおわりの時を迎えようとしていた。

 会いにいけるかな。

 目を閉じながら最後に考えたのは、そうだった。確かにそうだったと、記憶している。
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by MemenCrital | 2016-05-11 04:16 | 小語り:短編・掌編 | Trackback

泣く、笑う、怒る、楽しむ。そんなことが自然にできる、そんな世の中であればいい。


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