クリスマスな夜の夢 (3)

クリスマスな夜の夢 (3)


ひととおりの準備がすんだのか、さきほどまでのにぎやかさがうすれ、洋館は静まりかえっています。そこここかしこでひそひそと、なにやらみんなで話しこんで時をまっているようです。

「ねえねえ、いきおいよく飛び出せばいいのかな?僕」

「いっせえのせ、でいこうね、みんな」

「俺はどのタイミングで出ていけばいいんだ?」

「しらないよそんなの。パックに聞かなかったのかい?」

ぼそぼそとそんな声が、ひそひそと室内にまぎれ、ドキドキわくわくするような、そんな気持ちであふれています。
そんな中、外に出て、玄関の上にある小さな屋根の上にいる、ふたりの様子はというと・・・。

「へー、ボトムそんな長生きなのか。俺といい勝負かもな」

「パックってどれくらい前に生まれたの?」

「さあね」

「さあねって?」

「わかんないって言ってるの。そんなことしらないもの」

「じゃあ、いい勝負かどうかなんてわからないじゃないか」

「それよかさ、ボトムはなんで役立たずとかって自分のこというんだ?」

「・・・用無し」

「こまけえな。んじゃ、なんで用無しなんだ?」

「もうどこへいったってクルミを割るのに僕を使おうなんて人はいないから」

「へー、そうなんだ」

「うん」

「くるみって割るのたいへんなのか?」

「うん、すごく硬いから人の手じゃなかなか割れないよ」

「石でたたいたら割れる?」

「どうかなあ?」

「石で割れるなら別にお前いなくてもいいもんな」

そういわれて傷ついたボトムは、うっすらと目に涙をためて黙り込んでしまいました。

「あ、そういう意味じゃなくってさ、えと、ほら、その・・・」

「いいんだ」

「いやだからさ、ほらつまり、えっと」

「どうせもう僕、クルミなんか割りたくなかったから、いいんだ」

「そうなの?」

「割れたって喜んでもらえるのは最初のうちだけだし、しばらくしたら割れて当たり前になるし、僕の部品とか欠けてクルミが割れなかったりするとすぐ用無しっていわれて捨てられちゃうし」

「まあ、クルミが割れなきゃそうだろうなあ」

またまた、ボトムはひとみから今にも涙がこぼれおちそうなほどに涙をためて、気持ちをこらえています。

「でもほら、クルミを割りたくて人間はお前をつくったんだろうから」

「そんなの・・・つくった人に聞かなきゃわかんないやい」

「あ、そうか。ひょっとしたらくるみ割るってのがオマケかもしれないもんな?」

「それはわからないけど・・・」

ふいに、パックはあることを思いついて言いました。

「ボトムは、クルミ以外のものは割れないのか?」

「そんなことしたら壊れちゃってクルミが割れなくなるじゃないか!?」

ボトムは驚いたようにききかえしました。そんなことをしたらとんでもない、ますます用無しになってついには捨てられてしまうじゃないか。ひょっとしたら薪がわりに暖炉にくべられてしまう。そう考えるととても怖くなりました。

「やったことねえんだな。じゃあやってみればいいのに」

「だめだよ、ぜったいにだめ!そんなことしたら燃やされちゃうよ!!」

「でもボトムさ、さっきもうクルミなんか割りたくないっていった」

「そうだけど・・・」

「クルミを割らないでいいなら、他になにかためしたって別にいいだろう?」

「パックは自分のことじゃないからそういえるんだよ。そんなことしたら、ううん、そんなこと試すって考えただけでもおっかなくって・・・」

「おっかなくって?」

「それならまだ、だまって飾られている方がいいよ。だって怖いもん」

「まあ、いいや。俺の知ったこっちゃないことだし」

ドキドキしながらボトムは何度も、例えば人間がクルミ以外の何かを割ろうとして自分を使うことを想像しました。ブルーベリー、イチゴ、トマト、レタス、白菜、ジャガイモ、しいたけ、なにかのネジ、びーだま、ゴルフボール

「どれもこれも柔らかすぎるか、かたすぎてだめだよ」

「何が?」

「パックがいったんでしょう。クルミ以外のなにかを割れないかって」

「そうだっけ?」

「なんだよ!無責任だなあ」

「し!きたぞ!!」

パックの声に驚いて身を伏せると、なにやら玄関に、大きな人影が近づいてきたけはいがします。そのとたんに、さっと、洋館はしずまりかえりました。まるでなにごともなかったかのように。

「しっかりたのむぞ、ボトム」

え?でもまだ何をするのかきいてないよ、とボトムはパックに聞こうとしましたが、静かにと唇に指をたてるパックの動きになにもいえなくなり、そうしてそのままじっとするしかありませんでした。

ズシン!

足音が近づいてきます

ドシン!

玄関に立ちました

がちゃり

玄関のドアノブが回されたようです

ぎぎー

ドアが開いて、けはいが中にはいっていったのがわかりました。

「こっち、しずかにな」

静かにそう言ってパックは、玄関の屋根からひかりをとりいれるためにつくられた窓へと、さっと移動していきます。ボトムも慎重に音を立てないように、そちらへとむかいました。

「いよいよだぞ」

へへっと小さく笑って、パックは洋館の中をのぞきこんでいます。
ボトムもようやく窓へとたどりついて、パックのとなりから中をのぞきこんでいます。

どこからか、鈴の音がシャンシャンと聞こえてくる聖なる夜。
そんな夜にふさわしくない顔をしてニタリと笑う妖精と
まるでなにが起こるのかわからないでおどおどしている人形

この先は
また後ほど



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by MemenCrital | 2008-12-25 06:00 | 童語り:みんなのどうわ

泣く、笑う、怒る、楽しむ。そんなことが自然にできる、そんな世の中であればいい。


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