私の人生の三つの坂 -クダリザカ-


 下って行った坂のことは、とてもよく覚えている。

 たぶん、同じことを二度と繰り返さないようにと、記憶に深く刻まれてしまうんだろうな。

 下りはじめは些細な甘えからで、そこからズズズズズっとゆっくりなだらかに、けれど着実に下っていった。

 甘えというものを、恐ろしいと感じる。ほんの少し甘えたがために、自らの足で立つことを忘れていく。他者に依存し、そのくせ要求は増え、気がつけば我儘になって思いやることさえできなくなる。自己愛の肥大化。相手への攻撃。いろいろが混ざりあい、最後にはすべて台無しになって、そうしてそこから坂は加速して下りはじめた。

 うつ病を、甘ったれという人がいる。ある意味でそれは正しいと感じる。けれど体験してきた身としては、病の最中にいる者にとってそんな言葉は病状をさらに悪化させる毒薬でしかない。…でしか、なかった。

 反骨心や反発心は、多くは性格によるものだろう。そういう気概の強いものは、おそらくうつを患いにくいのではないだろうか。そこまで負い詰まる前に、しっかりと言い返すことができるだろうし、いざとなれば反撃だってできるだろう。優しくて責任感の強い人が、当時はバタバタとうつにやられていった。それを続けても嬉しいと感じないことを、責任感だけで続けねばいけない。喜びなどひとかけらも見当たらないのだ。見えたのはいつも、妥協したやり方にそれを甘えた評価で適当にしかしない人々。そんなものを仕事と呼べるのか?からはじまって、完成すればはい次。することは決まっている。創造性のかけらも進歩しようというきもちも、ない。ただ繰り返し同じことを同じように繰り返すだけ。そこに居れば居た時間だけ給与が与えられるから、さらにそこに居なければいけない時間だけが引き伸ばされていく。…地獄の責め苦か?!とすら感じたことがある。

 そんな日々を繰り返すうちに、ある日心のどこかで、ポキッと音がする。とても軽く優しい音だ。そうしてその次の日あたりから、仕事へ行けなくなっていく。笑えるくらいあっさりと、そこから症状がはじまっていったなぁ。
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エキサイト20周年企画~あなたの人生の3つの坂





 最初に病院へと行ったのは、家で自殺をしそうになった次の日のことだ。首にロープを巻き付けてハッと我に返った。そうして心療内科に行くと、「うつ状態ですね」と言われ薬を処方された。

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 うつ状態のまま、仕事は新しいものを探しつづけた。生活するためでもあったし、まだ人生を諦める気には到底なれなかったからもある。

 次についた仕事で、うつ状態がうつ病へと変わっていった。そもそもうつ状態となると、まわりの良いところなど目に入らなくなっている。見るもの、聞くもの、ほとんどが、苦しい、きたない、気持ち悪い、だ。怒りは常に抱え込んでいて、噛みつく相手を探しているような状態だった。そんな中で、場末のかっこだけつけたような職場で、現場入りと称して派遣され、協力するという言葉すら知らない脳筋の技術者を相手に、設計書をつくる作業をはじめていく。稼ぎの1割にも満たない給与で毎日朝早くから深夜になるまで働いて、休日すらままならない。つくってはやり直し、つくり直してはまたやり直しの無計画構築、構築後の仕様をまとめた設計書、手順が逆だろ?!自社へ戻れば、雇用保険に入れるのを忘れてたとか言い出す社長、遡って1年しか入れない。しかたないよな、いいだろう?!…これで失業保険すら手に入れられやしない。折しもリーマンショックでそこら中で失業者があふれかえっていた頃、そんなこともあったってだけの話だ。

 そして病。とことん下っていく。

 そんな頃に、このエキサイトでブログを書いていた。毎日、あっけらかんと。でも、楽しかった。
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第2回プラチナブロガーコンテスト



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by MemenCrital | 2017-12-30 16:30 | 動画:路の上の空

泣く、笑う、怒る、楽しむ。そんなことが自然にできる、そんな世の中であればいい。


by Memen -Asurawill H/B